NIHONCHA BREWERS CHAMPIONSHIP 2026

一杯の設計図

THE BLUEPRINT OF A CUP
しもきた茶苑大山 茶師十段之茶「拓朗(午)」

0:00–0:20 / 発話

「日本茶インストラクター協会北海道支部より参りました、根本拓と申します。」
ここは名乗りだけ。立場や思想は語らない。
次ページへのきっかけ:「まず初めに、論語にこんな言葉があります。」
論語 / 雍也篇
子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者
知る
好む
楽しむ
これを知る者は、これを好む者に如かず。
これを好む者は、これを楽しむ者に如かず。

0:20–0:50 / 発話

台本の起点。ここで置いた「知る → 好む → 楽しむ」は、15ページの循環図(知る→試す→味わう→調整)で回収する
読み下しは画面に出してあるので、読み上げなくてよい。原文だけ引いて、あとは自分の言葉で「知ることの先に、楽しむがある」と繋げる。
次ページへのきっかけ:「ただ美味しくお茶を飲むだけでも、日本茶との十分な付き合い方だと思います。」

日本茶は、入口が広い。

ただ美味しく飲むだけでも、十分な付き合い方。

その先は、限りない。

産地品種栽培 製茶歴史文化 科学
知ったことを手掛かりに、考え、試しながら味わう。
それも、日本茶を楽しむということ。

0:50–1:20 / 発話

一杯の背景に少し興味を持つと、産地・品種・栽培・製茶技術、歴史や文化、そして科学がある。入口の広さと、その先の奥深さの両方が面白いという話。
下段の一行が、前ページの「楽」の回収。
「難しくすること」と「知識や技術を大切にすること」は違う、という含みは残す。
次ページへのきっかけ:「そのきっかけとなったものの一つが、『合組』でした。」→「今日淹れるのは、しもきた茶苑大山さまの『茶師十段之茶 拓朗』です。」
2019 / 東京・下北沢

「茶師」って、なんだろう。

01
荒茶を
仕入れる
02
個性を
見極める
03
火入れと
合組
04
一つの茶に
仕上げる
産地ではない街に、
お茶を仕上げる技術があった。

1:20–1:50 / 発話

2019年頃、まだ煎茶の違いもよくわかっていなかった。産地ではない東京の下北沢で「茶師」という言葉に出会い、何のことだろうと調べた——という順序で話す。
合組は品質や価格の調整ではなく、個性を見極めて一つに仕上げる技術として紹介する。
次ページへのきっかけ:「伺ったところ、静岡県川根本町のお茶をベースに、鹿児島県産のお茶を組み合わせているそうです。」
THE DESIGN

茶師が、一つにまとめた茶

BASE
静岡県・川根本町
ベースにしている茶
拓朗
(午)
GOGUMI
BLEND
鹿児島県産
組み合わせている茶
熱湯で淹れても、低温で淹れても、美味しい。
「これは、設計された飲み物だ。」

1:50–2:20 / 発話

合組の内容はしもきた茶苑大山さまに伺った一次情報。「伺ったところ」と前置きして話す。
「設計された飲み物だ」という驚きが、この発表のタイトル「一杯の設計図」の由来。ここは強めに置く。
このページでは、産地ごとの香味の役割(山の香気/穏やかな甘み)は出さない。それは呈茶後の11ページで、私の官能表現と分けて示す。
注意:産地を分離して抽出する、とは絶対に言わない。
次ページへのきっかけ:「茶師が考え尽くした設計があるのであれば、」
TODAY'S THEME
茶師が考え尽くした設計があるのなら、
奇をてらわず、普通に淹れるのが筋。
それでも、あえて。

二種類のお茶が含まれていると分かる
そんな一杯を作ってみる。

淹れ手が狙いを持って、お茶を淹れる。
そのプロセス自体も、一緒に楽しんでいただけたら。

2:20–2:45 / 発話

台本C節。この発表の狙いを宣言するページ
「筋を通すなら普通に淹れる。それでも、あえて」という言い方で、茶師の設計への敬意を先に置いてから踏み出す。
言い方の境界:「二種類が含まれていると分かる一杯」。「産地を淹れ分ける」「分けて抽出する」とは言わない(22ページのQ&A 04と同じ境界)。
次ページへのきっかけ:「まず、淹れ手がコントロールできる変数は4つあります。」
THE VARIABLES

淹れ手が動かせるのは、この4つ

湯量
200mL
1椀40mL × 5碗
今回は固定
茶葉量
7g
湯量に対して決まる
今回は固定
温度
50 / 90
2種類の湯を使い分ける
今回動かす
時間
60 / 10
どの湯に、何秒浸すか
今回動かす
茶葉にない味は作れない。表れ方を変えられる。

2:45–3:15 / 発話

ページを開くと4つの図が左から順に動きます(湯が200mLまで注がれる→茶葉が7g積もる→温度計が50℃・90℃へ→文字盤が60秒・10秒を描く。約3.5秒で完了)。キー操作は不要。
話す順序(台本どおり):①湯量は自ずと決まる。1椀40mL程度 × 5碗で200mL。②茶葉量は湯量に対して相対的に決まる。適切な濃さとして7g。③温度と時間は、2種類の異なる温度の湯を使い、どの温度の湯に何秒浸すかを調節する。
「ない袖は振れない」。茶葉そのものに成分と個性があるからこそ、抽出条件で異なる側面を表出させられる。
次ページへのきっかけ:「それでは一煎目を淹れます。」
THE FIRST BREW

一煎目

総湯量200mL茶葉7g
PHASE 1 / 低温
50
30mL 60
少量の湯で茶葉を
ひたひたに濡らし、時間をかける
一煎目の一杯
PHASE 2 / 追い湯
90
+170mL 10
温度を上げて、
短時間で注ぎ分ける

3:15–3:45 / 所作(茶葉7g・50℃30mLの注湯)

ここは重要な発話をしない。このページを出したまま手を動かす。
所作(台本):湯を茶碗に入れ、急須に入れたあと湯冷しに注ぐ → 茶葉を茶入から茶則に取り出し、茶入に蓋 → 葉を茶則から急須へ → 茶則は茶入に傾けて置く → 急須を少し振って茶葉を均す → 湯冷しを手に持ち、少し揺らして手で温度を確かめ、ゆっくり急須に注ぐ → ここでタイマースタート
注ぎ終えたら次ページへ進み、60秒のあいだに成分の説明をする。
ページを開くと自動で動きます(PHASE 1が表示→山吹色が碗に注がれる→PHASE 2が表示→が上に重なる。約4.2秒で完了)。キー操作は不要。
碗の二層は「一杯の中に二つの表情」(11ページ)の伏線。二層に分けて描いているのは、2つの湯を区別するための図式的な色分けであって、茶湯の色を実測したものではない。聞かれたら「実際には急須の中で混ざります」と答える。
次ページへのきっかけ:「お茶の主要な味わいを構成する成分について、既存の研究では、」
THE SCIENCE

成分は、同じようには溶け出さない

同じ茶葉を 50℃70℃90℃ で、それぞれ 60秒 淹れたとき
テアニンアミノ酸類/旨味・甘味
50℃
40.5%
70℃
49.3%
90℃
90℃条件の測定なし
EGC遊離型カテキン/爽やかな渋み
50℃
17.5%
70℃
33.2%
90℃
44.2%
EGCgガレート型/重い苦渋味
50℃
6.9%
70℃
17.1%
90℃
31.5%
カフェインアルカロイド/苦味
50℃
21.6%
70℃
34.6%
90℃
62.7%
旨味・甘みの成分は、低い温度でも溶け出しやすい。 → 温度を上げると
テアニンも増える。だが苦味・渋みの成分の増え方が上回る。 → さらに90℃なら
高温では、苦味も渋みも短時間で出る。味わいのバランスが変わる。
坂本ら(2002)茶業研究報告 94:45-55、表2・表3(p.49)/深蒸し上級煎茶4g・湯120mL・1煎目60秒。3つの温度は、それぞれ別々に淹れた1煎目を並べたもので、低温のあとに高温を重ねた結果ではない。アミノ酸類(表3)に90℃条件はない。カフェインは表2(茶葉中2.9%)。拓朗(午)の実測値でもない。

3:45–4:45 / 60秒浸出中の発話(このページで前半を使う)

→ キーで 70℃ → 90℃ と段階的に伸びます(計2回)。台本では「グラフを見せながら」と明記されている箇所。
台本の言い回しと3段の対応:①「テアニンのような旨味・甘み成分は低い温度でも溶出しやすい」=入った時点(50℃)②「温度を上げていくに従って、テアニンの溶出量も増えますが」=1回目(70℃)③「特に高温になるとカテキンやカフェインといった苦味、渋みの成分が短時間でも溶出しやすくなるため、味わいのバランスが変化してまいります」=2回目(90℃)。
そのうえで「今回は、合組されている2種類のお茶が持つ良さを際立たせるため、成分が溶出する性質の差を利用した淹れ方としました」と言って3回目(次ページ=追い湯)へ。
言ってはいけない:「50℃なら旨味だけが出る」「低温ならカフェインは出ない」。このグラフを「一煎目の一段目→二段目」として説明しない(別々に淹れた1煎目の比較)。

想定質問①「テアニンの90℃は?」
→ 坂本らの表3(遊離アミノ酸)には50・60・70℃しかなく、90℃条件が測定されていない。だから示していない。
想定質問②「Phase 2は約84℃なのに、なぜ90℃のグラフ?」
→ 注ぐ湯そのものは90℃。急須の中で30mL・50℃と混ざって約84℃になる。グラフは「90℃の湯がどれだけ引き出す力を持つか」を見るためのもの。
想定質問③「EGCgも4.6倍に増えていますよね?」
→ その通り。だから二段目は温度ではなく時間で抑えている。このグラフは全て60秒だが、実際の追い湯は10秒。
想定質問④「カフェインは?」
グラフに入れてある(表2)。50℃21.6%/70℃34.6%/90℃62.7%。論文本文も「カフェインは湯温の上昇にともない溶出量が増加し、90℃で急に増加した。90℃1煎目のカフェインの溶出量は50℃1煎目のおよそ3倍であった」「遊離型カテキン類と近似した溶出性を示し、エステル型カテキン類より、はるかに溶出しやすかった」(p.47)と述べている。
(追い問い)「60℃は?」表2の60℃は38.4%で、70℃の34.6%より高い(逆転している)。論文は同じ段落の冒頭で「一部分析値にばらつきが認められた」と断っている。このスライドは50/70/90℃の3点で、その範囲では単調に増加するため60℃は載せていない。(追い問い)「低温なら少ないのでは?」50℃でも21.6%は出る。論文も「低温でもある程度溶出した」(p.50)と書いている。
THE FIRST BREW / DESIGN

だから、一煎目は二段で淹れる

合組された二つの茶の良さを際立たせるために、成分が溶け出す性質の差を使う
50℃ 約84℃ 60秒 50℃ ・ 30mL 10秒 +90℃ ・ 170mL
PHASE 1 / 低温・時間をかける
  • アミノ酸類を先に引き出す
  • カテキン類はまだ出にくい
PHASE 2 / 追い湯・高温・短時間
  • 90℃の湯を加え、急須の中で約84℃に
  • 爽やかな渋みを後から立ち上げる
  • 10秒で切り、苦味・重い苦渋味の出過ぎを避ける

4:45–5:45 / 追い湯・抽出・廻し注ぎ・呈茶

台本の「今回は、合組されている2種類のお茶が持つ良さを際立たせるため、成分が溶出する性質の差を利用した淹れ方としました」でこのページへ。そのまま90℃の湯を急須に注ぎ始める。以降は原則として重要な発話はしない。
所作(台本):90℃を注ぐ → すぐに廻し注ぎ → 注ぎ終わったら茶碗の糸底を拭いて茶托に並べる → 配膳してもらう。
混合温度は熱損失を無視した単純計算で約84℃。実際には急須・茶葉への熱移動でさらに数℃下がる。
言い方:ガレート型を「抑え込む」ではなく「出過ぎを避けることを狙う」。
前ページで見たとおり、90℃・60秒ならカフェインは62.7%、EGCgは31.5%まで出る。抑えているのは温度ではなく時間
PHASE 1の「カテキン類はまだ出にくい」について:前ページでカフェインは50℃でも21.6%(EGCの17.5%より多い)と出ている。突かれたら「低温で出にくいのはカテキン類、とくにガレート型であって、カフェインは低温でもある程度出る」と正直に答える(論文 p.50 の記述どおり)。
次ページへのきっかけ:呈茶が終わり、審査員が飲み始めてから「この『拓朗』は、静岡県川根本町の『山の香気』をもつお茶をベースに、」
THE SENSORY

一杯の中に、二つの表情

若草のような爽やかな香り 煎茶らしいキレのある渋み 瓜のような 瑞々しい甘みと香り
茶師に伺った設計は、川根本町の「山の香気」に、鹿児島県産の「穏やかな甘み」を合わせたもの。
※ 図の二つは私自身の官能表現です。どちらの香味がどの産地に由来するか、という対応づけではありません。

5:45–6:30 / 味わう時間+発話

審査員が味わう時間を確保する。すぐ二煎目へ行かない。
スライドは図だけにしてあるので、言葉はここで補う。台本どおり「これらが同居した一杯であることを強調するために、まず低温で浸出させてから、高温の湯を当てることで渋味と香りを立ち上げています」まで話す。
要点は、図の二つと下の一行を混ぜないこと。図の二つ(若草のような香り・キレのある渋み/瓜のような瑞々しい甘みと香り)は私の官能表現、下の一行(山の香気/穏やかな甘み)は茶師に伺った設計。左右で対応させて語らない。
言い方:「私は瓜のような瑞々しい香りとして感じています」。特定の産地由来・特定の香気成分由来とは言わない。香気分析はしていない。
8ページの碗の二層(山吹+緑)が視覚的な伏線。ただし二段抽出がこの二つの表情を生む、と断定はしない。
次ページへのきっかけ:「二煎目ですが、高温の90℃のお湯を直接当てて、」
THE SECOND BREW

二煎目

茶葉は同じ。条件だけを変える。
高温・短時間
90 200mL 10
一煎目で十分に吸水した茶葉は、一煎目よりも成分が溶出しやすい

6:30–7:15 / 所作(抽出・注ぎ分け・呈茶)+発話

台本が変わり、このページは「話しながら淹れる」ページになった。他の所作ページ(8・10)と違い、無言ではない。
台本:「二煎目ですが、高温の90℃のお湯を直接当てて、時間をかけずに10秒程度で淹れます。」→ ここで淹れてしまう →「すでに吸水済みのお茶の葉に高温の湯を当てる二煎目の場合は、一煎目よりも成分が溶出しやすいという研究結果があります。今回は爽快でさっぱりとした二煎目を味わっていただきたいと思います。」
科学説明は繰り返さず簡潔に。根拠の数値は21ページ(Q&A 03)にある。
言ってはいけない:「90℃・10秒が科学的最適値」「出し切る」。
次ページへのきっかけ:「今回は爽快でさっぱりとした二煎目を」
THE SECOND BREW

爽快に、さっぱりと。

一煎目で残ったものを、
高温・短時間で引き出す。

7:15–7:45 / 味わう時間

台本の「爽快でさっぱりとした二煎目を味わっていただきたい」を受けるページ。ここは黙って、味わう時間を取る。
次ページへのきっかけ:「一煎目と二煎目。茶葉は同じです。」(台本シードに本文がない箇所。自分の言葉で繋ぐ)
SYNTHESIS

同じ茶葉、異なる表情

一煎目
二煎目
条件
50℃ 30mL 60秒
90℃ 170mL 10秒
90℃ 200mL 10秒
狙い
低温で時間を取り、
あとから温度を上げる
吸水済みの茶葉に
高温を短く当てる
味わい
複層的
爽やかな香りと渋み+瑞々しい甘み
爽快・さっぱり
そのお茶らしいキレ
どちらが好きかは、人によって違っていい。

7:45–8:05 / 発話

台本シードに本文がない橋渡しのページ。品質と嗜好は同じものではない、という一点だけ置く。
次ページへのきっかけ:「これは、正解の淹れ方ではありません。」

これは「正解の淹れ方」ではなく、
一つの仮説です。

LEARN
TRY
TASTE
ADJUST
また、次の一杯へ
知識は正解ではなく、自分で考えるための材料
積み重ねられてきた知見を土台に、そこから一歩だけ踏み出してみた淹れ方です。

8:05–8:35 / 発話

台本C節の見出し「知識を『正解』ではなく、自分で考える材料にする」を回収するページ。2ページの論語(知→好→楽)への折り返しでもある。
今回の淹れ方が正解なのではないこと、知見を土台に自分なりの一杯を考えることも日本茶の楽しみであること、この2つを言う。
「もう少し温度を上げてみようかな」と思った時点で、その人はもう自分で一杯を考え始めている。
次ページへのきっかけ:「最後になりますが、」
EPILOGUE / 一人の飲み手として

日本茶は、何も知らなくても美味しく飲めます。

その上で、
「このお茶は、
どんなお茶だろう」
「どうやって
淹れてみよう」
そう思ったなら、その時点で、
その一杯を自分で考え始めている。
私が伝えたいのは、まさにその楽しさです。

8:35–9:15 / 発話

台本F節。「茶業者でもなく、茶道家でもない」という自己開示は、更新後の台本から削除されているため、スライドからも外した。立場を明かして語るのではなく、「一人の飲み手」としての実感をそのまま置く構成。
日本茶の未来には、道具・淹茶法・製品・伝えること・受け継ぐことなど、さまざまなアプローチがある。それを尊重したうえで、自分の立場から見える未来を語る。対立として語らない。
次ページへのきっかけ:「10年、20年経てば、」
10年、20年経てば、また次の世代が日本茶に出会い、
何度でも再発見される。

飲む人が、
日本茶を面白がり続けること。

9:15–10:00 / 締め+余白

最後の一言は台本どおり「私は、それも日本茶を未来へつないでいくことの一つだと思っています。」この一行は画面に出していないので、キーフレーズを残したまま自分の言葉で締める。
所作の遅延・自然な間はここで吸収する。予定どおりなら無理に埋めず自然に終了。
APPENDIX

質疑応答用

なぜ50℃・60秒か / なぜ30mLか
なぜ90℃・10秒か / 産地を淹れ分けているのか

本編ここまで。以降は質問が出たときだけ。

Q&A 01
なぜ 50℃・60秒 なのか。
同じ茶葉を 60秒 淹れたとき、旨味重い苦渋味の出方に、どれだけ差がつくか
40℃以下
時間切れ
低いほど差は開くが、
必要な浸出時間が延び、
10分のプレゼンに収まらない
50℃(採用)
差が残る
旨味は出ているのに、
重い苦渋味は
まだ大きく出ていない
70℃
差が縮む
旨味も増えるが、
重い苦渋味の
増え方が上回る
坂本ら(2002)表2・表3(p.49)/深蒸し上級煎茶4g・湯120mL・1煎目60秒。旨味=アミノ酸類、重い苦渋味=ガレート型カテキン。50℃:テアニン40.5%/EGCg 6.9% → 70℃:テアニン49.3%/EGCg 17.1%。40℃条件は論文になく、傾向からの判断。
言い方の境界:「50℃なら旨味だけが出る」とは言わない。低温でも溶出しやすい成分と、低温では溶出が遅い成分のを利用している、と説明する。

Q&A 01 / なぜ50℃か

言いたいこと:温度を下げるほど、旨味と重い苦渋味(ガレート型カテキン)の「出方の差」は開く。ただし、そのぶん浸出に時間がかかる。50℃・60秒は、差が残ったまま持ち時間に収まる点として選んでいる。
数値(坂本ら2002、表2・表3 p.49):50℃=アスパラギン酸53.5/グルタミン酸52.4/セリン50.0/グルタミン47.0/テアニン40.5%、EGCg 6.9/ECg 7.3%、カフェイン21.6%。70℃=テアニン49.3/EGC 33.2/EGCg 17.1/カフェイン34.6%。
想定質問「60℃は?」→ 表2の60℃カフェインは38.4%で、70℃の34.6%を上回っている(逆転している)。論文は同じ段落の冒頭で「一部分析値にばらつきが認められた」と断っている。9ページと同じ理由で、このページも50℃と70℃の2点で示している。傾向としては60℃も差が縮む側。
想定質問「40℃は?」→ 論文に40℃条件はない。「40℃以下」は測定値ではなく、低温ほど差は開くが浸出は遅くなる、という傾向からの設計判断。
言ってはいけない:「50℃なら旨味だけが出る」。50℃でもカフェインは21.6%出ている。
Q&A 02
なぜ最初の湯は 30mL なのか。
20mL
約86℃
7gの茶葉を
均一に濡らせない恐れ
30mL(採用)
約84℃
ひたひたに濡らす実用性と、
追い湯後の温度の立ち上がりを両立
40mL
約82℃
低温相の液量が増え、
混合温度が下がる
※ 90℃の湯を加えたときの、熱損失を無視した単純混合温度。
言い方の境界:「30mLは科学的に導出された最適湯量」とは言わない。原理は研究から、具体値は実飲から決めた、と説明する。
Q&A 03
なぜ二煎目は 90℃・10秒 なのか。
吸水済みの茶葉なら、90℃・10秒でもこれだけ追加で出る(同じ茶葉での連続抽出)
1煎目 90℃・60秒 2煎目 90℃・10秒の追加分
EGC遊離型/爽やかな渋み
44.2% +35.0 → 79.2%
EGCgガレート型/重い苦渋味
31.5% +15.4 → 46.9%
カフェイン苦味
62.7% +20.1 → 82.8%
坂本ら(2002)表2(p.49)。EC は 44.6%→79.2%、ECg は 27.6%→41.5%。10秒でも十分に出る。だから長く置かないという設計。ただし研究の1煎目は90℃・60秒であり、今回の一煎目(50℃30mL60秒+約84℃10秒)とは茶葉の状態が異なるため、この追加分がそのまま拓朗(午)に当てはまるわけではない。
言い方の境界:「90℃・10秒が拓朗(午)の科学的最適値」とは言わない。「出し切る」も言わない。既存研究の挙動と実飲目的に整合する実践的な基準値として採用した、と説明する。
Q&A 04
川根本町と鹿児島を、淹れ分けているのか。
産地ごとの成分を
分けて抽出している
そのような証拠はありません
茶師が一つにまとめた茶から
異なる側面を表現している
今回行っているのはこちら
区別する三層:① 文献で確認された事実 ② 文献を土台にした今回の設計判断 ③ 拓朗(午)での実飲・官能評価。
「瓜のような瑞々しい香り」も香気分析はしておらず、あくまで「私はそう感じている」という官能表現。
REFERENCES

主要参考文献

  • 坂本 彬・中川 致之・杉山 弘成・堀江 秀樹(2002)「煎茶の1煎, 2煎, 3煎液の成分組成に基づく溶出特性」茶業研究報告 94:45-55. DOI: 10.5979/cha.2002.94_45
  • 堀江 秀樹・氏原 ともみ・木幡 勝則(2001)「茶主要成分の茶浸出液への溶出特性」茶業研究報告 91:29-33. DOI: 10.5979/cha.2001.91_29
  • 池田 重美・中川 致之・岩浅 潔(1972)「煎茶の浸出条件と可溶成分との関係」茶業研究報告 37:69-78. DOI: 10.5979/cha.1972.69
  • 久保 智子・藤原 孝之・冨澤 代志子(2014)「異なる条件で浸出した緑茶の渋味およびうま味の味覚センサーによる評価」日本食品科学工学会誌 61(5):192-198. DOI: 10.3136/nskkk.61.192
  • 野村 幸子ほか(2023)「‘やぶきた’二番茶の煎茶および釜炒り茶の冷水浸出液における化学成分の違い」茶業研究報告 135:19-28
いずれも拓朗(午)を試料とした研究ではありません。原理の理解に用い、具体的な条件は実飲によって決定しています。
坂本ら(2002)は J-STAGE で全文(PDF)を確認し、本資料の数値は表2(カテキン類・カフェイン)および表3(遊離アミノ酸)p.49 から直接引用しています。
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一杯の設計図 NBC 2026
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